店長日記
誇りを持ってⅢ
2012年04月07日
俺がこのショップと呼ばれる場所に住むようになって
一年以上が過ぎた
普通のエビ達にとって ここは通過点でしかない
しかし、オーナーと言う男に気に入られた俺は
この店の一番高い位置にある水槽で
やはり 村から来たメスと共に暮らした
そして、沢山の子供たちに恵まれた
いつしか俺は「爺さん」と呼ばれるようになった
かつて、村の長老を「爺さん」と呼び
その話に耳を傾けた俺が
今は、若いのを相手に 持てる知識の全てをもって
語り聞かせる
様々なエビの生き様を見てきた
よその国から来たという
言葉の通じぬエビもいたが
最後には心で分かり合えるようにもなった
俺達を愛する者がいて
水槽を眺める 心の余裕がある限り
ここは未来のある国なのだと、俺は伝えた
この人生が幸せだったのか
それは誰にもわからない
ただ、誰かに愛されて 生きてきた
それだけは幸せだったと言える
子供達の多くは巣立って行った
村を出た時の俺と同じように、不安に怯えながら
そんな時、俺は言う
「誇りを持って生きよ! 俺達は紅蜂だ」と