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店長日記
ザリガニ
2016年12月14日
その豊満な肢体?で湯船に浸かった時
なぜか急に遠い昔の事が頭に浮かんだ


朝から ざる一杯に茹でられたとうもろこし
まだ熱いそれをかじると
東京から来た一つ上の従兄弟のあとを追って
サンダルを引っ掛け 外に飛び出す

夏休みの間、
私たちは母親の実家の農家に子供だけ預けられた

私は従兄弟が大好きだった
日課のように バケツを持って田んぼに出かけ
細い竹の先に糸をたらし
カエルを捕まえると 足をもぎ皮をむいた
その足を糸で結んで 小さな用水路の中にたらす

すると面白いほどにザリガニが寄ってきて
バケツはすぐにザリガニで一杯になった
カエルの皮むきや ザリガニつかみは 恐くてできなかったが 
そんな従兄弟の様子を尊敬の目で見ていた

取ったザリガニを鶏小屋の中に投げ入れると
今度は鶏が大騒ぎで寄ってくる

またとうもろこしをかじり
今度は海まで探検だ

草いきれの道を 方角的には海はあちらだろうと言う
漠然とした 感のようなもので
ずっと歩き続けた
子供の足には 遠い遠い海だった

来る日も、来る日も
とうもろこしと ザリガニそして海
草いきれと 照りつける太陽と白い雲、青空
なぜか 妙に懐かしく 想いだした

ザリガニは 昨日の管理人さんのアナ雪ザリガニに衝撃を受け
記憶のどこかから飛び出してきたのだろう

子供の頃のザリガニは赤かった
ザリガニは どこで道を踏み外したのか?


もうあの日も あの場所も もう戻らない

震災から1ヶ月 
伯母たちの避難先を訪ねた時に見たそこは

屋敷森も狐の祠も 跡形も無く消え
家も田畑もわからなくなって

遠いと思っていた海が
わずかに残った松の防風林の向こうに茶色の波を見せていた

あぁ、私も何処かで道を踏み外したんだろうか?


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